- いいところ
古典的なRPGっぽい世界。
モンスター料理がおいしそう。
略称 | ダン飯 |
作者 | 九井諒子 |
出版社 | KADOKAWA |
連載開始日 | 2014年(平成26年)2月15日 |
序盤の物語
ある島の墓地に地下への抜け穴が現れ、かつて滅んだ大国の王を名乗る男がはい出してきた。彼は「王国は狂乱の魔術師に支配されている」「狂乱の魔術師を倒した者に王国の全てを与える」と告げ、塵と化して消えた。
抜け穴は深いダンジョンとつながっていた。冒険者たちは富や名声を求め、魔物がはびこるダンジョンへ踏み込んでいく。ライオス・ファリンのトーデン兄妹と仲間たちもそんな冒険者の一行だった。しかしレッドドラゴンによって壊滅し、ファリンは魔法によってライオスたちを逃がす。
ライオスは妹を助けたいが、資金が足りない。そこで切り出した手段は驚くべきものだった。
ダンジョンRPG的な漫画
昔懐かしいファンタジーRPGをすごく意識した漫画。主人公たち冒険者には「トールマン(人間っぽい)」「エルフ」「ドワーフ」「ハーフフット(ホビットっぽい)」などの種族があり、「戦士」「盗賊」「忍者」「侍」などの職業っぽい特徴を持っています。
僕が読み始めたのはレッドドラゴンと再戦する直前辺りだったと思います。のんびり読み進めていましたが、気が付くとかなりの年月が過ぎていました。
ダンジョンで飯(料理)
本作のもう1つの(というか最大の)特徴は、主人公一行がダンジョンで倒したモンスターを料理して食べること。冒険資金が足りないのでモンスターで食費を減らそうという考えです。
作中人物がそういうことをする作品はこれが初めてじゃありません。サンサーラナーガやゲームボーイのサガシリーズにはバトルで倒したモンスターを食べる場面があり、RPGのパロディ漫画でも「主人公たちがモンスターを倒し、料理して食べる」という場面を見たことがあります。
ただしそれをやるのはドラゴンやモンスターなどの動物っぽいキャラだけだったり、他者から「あんたら何やってんの……」と白い目で見られたりしていました。
本作でも、常識的な性格のキャラが「モンスターを食べるなんてどうなの?」と引き気味の態度を取ります。つまり本作の中でも「モンスターを食べる」という行為が非常識なのは間違いありません。
それはそれとして、本作で作られたモンスター料理は普通においしそうです。文句を言っていたキャラも嫌そうに口へ運んでから「これおいしい!」と驚きます。
おいしそうな見た目は作者さんの絵のうまさ、そして「そんなの食べるの?」から「おいしい!」に変わるのは作者さんの作劇上のうまさなんだと思います。
食べられるモンスターと食べられないモンスター(大体食べられる)
巨大な動物という感じのモンスター(ドラゴン辺りも含む)を食べるのはわかります。原始時代でマンモスを倒して食べるのと同じです。
植物モンスターを食べるのもわかります。現実にある大根やサツマイモのちょっと変わったタイプみたいなものかもしれません。
僕も、ドラクエ1・2をやっていた小学生のころに「主人公(たち)は旅の途中で何を食べてるんだろう。食べられそうなモンスターを食べてるんじゃない?」とか思っていました。
キメラとかドラゴンとか、スライムとか……
本作ではもっとすごいモンスターを食べます。
動く鎧、ミミック、ナイトメア……と。
鎧とか宝箱とか悪魔的なものとかどうするのと僕は思ってしまいますが、作者さんの想像力はすごいです。モンスターの設定の方を食べられる話に近づけます。
- 動く鎧
鎧っぽい形の貝殻を持つ貝類。 - ミミック
宝箱を宿にするヤドカリのような生き物。 - ナイトメア
幻を生み出すモンスターの蜃(貝または竜)と関連づける。
さすがにゴーストやゴーレムは食べられません。
その代わり、食べることに役立てます。
- ゴースト
発する冷気でシャーベットを作る。 - ゴーレム
体で野菜を栽培する。
まさに逆転の発想。
作中人物の種族
僕にとって最もなじみがあるファンタジーのソードワールドと比較する部分が多めです。
トールマン
人間っぽい種族です。
普通っぽい種族なのは他のRPGと同じ。いろいろな立場の人物がいるのも他の作品と同じです。
エルフ
耳が長くて腕力が弱くて魔法が得意、という僕になじみがあるタイプのエルフ。
ソードワールドだと「人間の魔法使い→魔法を学問として学んで習得」「エルフの魔法使い→精霊など自然的な魔法を習得」みたいな感じで、一般的なエルフは人間に関わろうとしません。
一方本作のエルフは魔法を学問のように扱い、トールマンを含む他の種族に干渉します。
ハーフエルフ
他の作品と最も違う設定のような。
エルフより長命なことがあったり魔法への適性が高かったりします。エルフから下に見られるのは同じ。
ドワーフ
腕力があって手先が器用、ひげを伸ばすことが多い……と、他の作品に出てくるドワーフとかなり近いです。
ハーフフット
「ホビット」と言わないのは権利関係に気を付けているからだと思います。
ソードワールドで言うところのグラスランナーで、手先が器用だったり素早かったり盗賊向きだったりします。
ただ、グラスランナーが自由奔放な性格の人物ばかりだったのに対してハーフフットには真面目な人物も出てきます。主人公一行のチルチャックなんてすごく人格者です。
ノーム
後衛向きのドワーフみたいな感じ。自然的な魔法を使うのはエルフじゃなくてこっちです。
作品によっては「ノーム=土の精霊」で、その場合はプレイヤーキャラの種族にノームがいません。しかし本作には精霊のノームもプレイヤーキャラの種族のノームもいます。
黒幕的なアレ
ネタバレになるので深くは語りませんが、「こんなやつをどうしたら倒せるんだ……」という状況から解決方法へ至るところは本作ならではという感じ。
世界観についての話も好きです。
種族としてのノームは、作中の大昔にいた誰かが精霊としてのノームを見て考え出したんじゃないでしょうか。
終わりに
僕は「原作を見たらメディアミックス作品は見なくていい」みたいな感覚を持っているので、漫画がアニメ化されても見ないことが多いです。
本作は漫画で完結まで見ました。しかし、アニメも普通に見て楽しんでいます。
それは僕が好きなファンタジーだからであり、料理というアクセントを加えたところにうまさを感じるからじゃないでしょうか。
料理、飲食は誰でもやること。
そういうものを付け足せば取っつきやすさアップになり、楽しめる方が増えるはずです。
ダンジョン飯。ああダンジョン飯。
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